つまずき

掌編

 僕は、よく転ぶ。子どもの頃から、大人になったいまでも、よく転ぶ。
 転ぶのは決まって、何もない真っ直ぐなところだ。急な坂でも、下り坂でも、はたまた障害物があるわけでもない、ただの平坦なところ。そんなところで、僕は転ぶ。いっそ石ころのひとつでも落ちていれば、ああ、あれにつまずいたのだなと得心するのだけれど、なにせ、何も無いのだ。僕はいつも、何もないところで転ぶのだ。

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